お知らせ 2019.04.24

単孔式胸腔鏡手術研究会 第一回例会を終えて

平成31年4月20日(土)の第119回日本外科学会的学術集会終了後に単孔式胸腔鏡手術研究会 第一回例会が行われました。本会の発起人で会長である森川利昭 前東京慈恵会医科大学教授の声掛けによりJUVIG(Japanese Uniportal VATS interest Group)発足後、初めての会でありました。日程の都合など参加者の人数が少ないのではないかという関係者の心配はよそに総勢35人もの先生方が参加していただきました。日本呼吸器外科前理事長である奥村明之進先生と現理事長である千田雅之先生も参加して頂き、ご講演していただきましたこともあり、活発な討論が行われ、成功裡に会は終了致しました。参加者の先生方におかれましては関係者一同心より感謝申し上げます。

Uniportal VATSはDr. Gonzaletzが2010年に肺癌への肺葉切除を始め、それに遅れること約2年後に私は単孔式胸腔鏡手術を開始しました。2012年当初はかなり批判を浴びました。特に肺癌への手術導入に関する学会発表などではさらに批判が強くなり、日本では到底普及することが不可能ではないかとさえ考えました。しかしながら、現時点において中国や一部のヨーロッパの国々では確実に普及しており、すでに中国では肺癌をはじめとするすべての呼吸器外科疾患に通常おこなわれる手術となっています。手術手技の精度の面では多孔式VATSとは現在は劣るもののUniportal VATSの手術手技の精度も確実に上がってきており、今後期待すべき低侵襲外科治療であると考えております。低侵襲外科治療としてはロボット支援手術が注目を浴びておりますが、医療コスト面や簡単な症例への必要性などの問題はあり、患者さんのことを真に考える上で特別な道具も必要とせず、どこの施設でも導入可能な手術手技である本術式を若手の呼吸器外科医が習得しないことは得策ではないと考えます。さらに、海外の呼吸器外科医との温度差を日本の呼吸器外科医は感じなければならない時期ではないかとも考えます。自施設での約6年間の臨床病期I期肺癌の手術成績では5年生存率は80.2%であり、予後的にも許容範囲内の術式であると考えています。また、同術後創部痛に関しても従来の多孔式VATSよりも抑制効果があり、開胸術後疼痛症候群の発症も低いという結果も得られております。今後もこの会が継続し、本術式が日本で安全に普及することに貢献するというミッションを果たすべく会長である森川ともども努力していく所存でおります。今後ともご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

また、時間の都合上、最後のセッションが余儀なく短縮してしまいましたこと心よりお詫び申し上げます。

 

日本医科大学千葉北総病院 呼吸器外科

単孔式胸腔鏡手術研究会 常任幹事

平井 恭二